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3.2 電子フォームのデザイン

 FNSシステムで利用可能な電子フォームには次の2種類があります。

1) PDFフォーム

 アドビーシステムズ社が提供するPDFPortable Document Format)ファイルのフォーム機能を利用した電子フォームです。A3、A4、B5など、元のサイズや書式を維持したデータ転送が行えます。このフォームの画面表示や印刷結果には作成者のデザインがそのまま反映されます。

 FNSシステムでは、PDFフォームをグループ内のメンバ間のデータ転送に使用できます。

2) HTMLフォーム

 本節では、グループ内のメンバ間のデータ転送で使用するHTMLフォームについて説明します。

 受付箱あるいは提示箱のデータの登録・変更・参照で使用するHTMLフォームについてはそれぞれ3.6 受付箱管理」、「3.7 提示箱管理を参照してください。

 

(1) PDFフォームのデザイン

 PDFフォームを用いた電子フォームのデザインについては、図3.2−1に示す「仕入れ伝票」を例に説明します。

図3.2−1 電子フォーム(仕入れ伝票)

 この仕入れ伝票のPDFフォームを登録するために3ないし4個のファイルを用意する必要があります。第2章で述べたように必要なファイルは次表の4種です。

ファイルの種類

指定

説    明

rw(書込可)

必須

起票時に使用

rdonly(読出専用)

必須

返信の必要がない受信データおよび送信履歴データの表示に使用

wtreply(返信用)

任意

返信が必要な受信データの表示に使用

pic(縮小表示用)

必須

電子フォーム一覧でのフォームイメージの表示に使用

 以下の説明((a)および(b))では主にrw(書込可)のPDFファイルのデザイン方法について説明しますが、その他の種類のファイルについては(c)で説明します。

(a)フォーム意匠のデザイン

 PDFフォームではPDFファイルのフォーム機能を使うと先に述べましたが、具体的にはMS-WordMS-Excelなどの印刷機能を使ってPDFファイルを作成し、そのPDFファイルをアドビーシステムズ社のAdobe Acrobatで読出し、入出力可能なフィールドを上書きするやり方でPDFフォームをデザインします(図3.2−2参照)。

図3.2−2 PDFファイルの作成手順

 最初に、図3.2−1に示す電子フォームの意匠をデザインします。図3.2−1に示した仕入れ伝票の意匠(クリア、印刷、送信ボタンを除く)はMS-Wordの図形描画機能を使用して作成しています。MS-WordMS-ExcelがインストールされているパソコンにAdobe Acrobatをインストールすると、Acrobat PDFWriterAcrobat Distillerもインストールされます。これらのソフトはMS-WordMS-Excelが使用するプリンタの1つとして扱われます。MS-Wordを使用して仕入れ伝票を印刷する際、プリンタの代わりにこれらのソフトを選択すると、紙に印刷されるのではなく、PDFファイルが作成されます。

(b)フォームフィールドの貼り付け

 次に、Adobe Acrobatを使用して上記で作成したPDFファイルの上に入出力可能なフィールドを貼りつけます。Adobe Acrobatで上記のPDFファイルを開くと、図3.2−1に示した仕入れ伝票が表示されます。Adobe Acrobatのフォームツールを使用してこの画面の上に直接フィールドを貼り付けて行きます。例えば、仕入れ伝票の社店名の欄にフィールドを貼り付けてみましょう。

図3.2−3 フォームフィールドの貼り付け

 画面上の図形「社店名」の内側にカーソルを合わせてフィールドをドラッグすると、黒枠のフィールドが描かれます(図3.2−3参照)。そして同時に図3.2−4のフィールドのプロパティウィンドウが表示されます。このウィンドウを使用してフィールドに名前(この例ではname)を付け、各種属性を設定します。詳細についてはAdobe Acrobatのフォーム機能を参照してください。

図3.2−4 フィールドのプロパティ

 同様の方法で仕入れ伝票の各欄にフォームフィールドを貼り付けた後の全体イメージは図3.2−5に示す通りです。

図3.2−5 フォームフィールドの全体イメージ

 これらのフォームフィールドは仕入れ伝票の各欄を入力可能にするためのものですが、上記以外にもFNSシステムが要求する各種フィールドを貼り付ける必要があります。これらのフィールドの名前はすべて予約語として扱われ、利用者固有の目的では使用できません。以下に予約語とその目的、指定方法について説明します。

(イ) グループ名(mfgrpname)   必須

 このフィールドではPDFフォームが使われるグループの名前を指定します。PDFフォームには必ず1つ指定する必要があります。

 このフィールドのプロパティは図3.2−6に示すように指定します。

 名前欄に「mfgrpname」を指定します。表示方法タブのフォームフィールド欄で「非表示」を指定すれば、このフィールドは表示されません。このPDFフォームを特定のグループのみで使用する場合はオプションタブのディフォルト欄にグループの名前を指定します。その他のタブはそのままにしておきます。しかし、複数のグループで使用することを前提にPDFフォームをデザインする場合にはオプションタブを含めその他のタブはそのままにしておきます。この場合次のやり方でPDFフォームにグループ名を取り出すためのJavaScriptプログラムを埋め込みます。

■ メニューバーから「ツール」→「フォーム」→「JavaScriptの編集」を選択し次の関数を登録します。

function setgrpname() 



var f=this.getField("mfgrpname"); 

var wurl=this.path; 

var sidx=wurl.indexOf("?grpname="); 

if(sidx>=0){wurl=wurl.substring(sidx+9,wurl.length);} 

else { 

   sidx=wurl.indexOf("&grpname ="); 

   if(sidx>=0){wurl=wurl.substring(sidx+9,wurl.length);} 

   else {wurl ="";} 



   var tidx=wurl.indexOf("&"); 

   if (tidx >=0){wurl =wurl.substring(0,tidx);} 

   if (wurl.indexOf("%")>= 0){ 

   var name="wurl='" ; 

   var i; 

   for(i=0; i < wurl.length; i++){ 

      if(wurl.charAt(i)=="+"){name=name+" ";} 

      else if(wurl.charAt(i)=="%"){ 

         name=name+"\\x"+wurl.substring(i+1,i+3); 

         i+=2;} 

      else{name=name+wurl.charAt(i);} 

   } 

   name=name+"'"; 

   eval(name); 



f.value=wurl; 



■ メニューバーから「文書」→「ページ開閉時の動作の設定」を選択し、「ページを開く」で「JavaScript」を指定し、JavaScript関数setgrpname()を呼び出すように設定します。 

図3.2−6 mfgrpnameのプロパティ(表示方法タブ)

 

(ロ) フォームIDmfformid)    必須

 このフィールドではPDFフォームの名前(先頭が下線ではない半角の英数字あるいは下線からなる長さ25バイト以内の文字列)を指定します。PDFフォームに必ず1つ指定する必要があります。PDFフォームの名前は図3.2−7に示すフィールドのプロパティのオプションタブのデフォルトに指定します。仕入れ伝票の例ではordersmPDFフォームの名前です。フォームIDはグループ内で一意である必要があります。複数のグループでこのPDFフォームを共有する場合にはそれらのグループを通して名前が重複しないように定義する必要があります。

図3.2−7 mfformidのプロパティ(オプションタブ)

(ハ) 順序番号(mfturn

 これはデータ転送の順序番号を収める数値フィールドです。データ転送規則が“配信&集信”、“集信&配信”および“発信&返信”の場合は必ず指定しなければなりません。“配信”や“集信”、“発信”の場合は指定する必要はありません。

 図3.2−8に示すようにフィールドmfturnのプロパティのオプションタブではデフォルト値を0にします。また、フォーマットタブでは分類を少数桁なしの数値を指定します。 

図3.2−8 mfturnのプロパティ(表示タブ)

(ニ) 宛先(mfdist あるいは mfdist0)  必須

このフィールドは書込可のPDFファイルに貼り付け、宛先を指定します。宛先には規定値として、

_MANAGER”、“_ALL”、“_ALLTOHERSIDE”、利用者名

の4種が指定できます。以下の説明で使われている用語:“管理者”、“利用者”、“運用者”等については、第2章操作概要の2.1(1)「グループの作成」を選択した場合を参照してください。 

■ “_MANAGER

 宛先は管理者です。

■ “_ALL

   宛先は発信者以外の全利用者です。

■ _ALLOTHERSIDE

 発信者が運用者(A端利用者)ならば、宛先は運用者(A端利用者)と対向する全利用者(B端利用者)です。

 発信者が利用者(B端利用者)ならば、宛先は利用者(B端利用者)と対向する運用者(全A端利用者)です。

■ 利用者名

   宛先は指定した利用者です。

 このPDFフォームを表示したとき、宛先フィールドには規定値が表示されますが、データ送信の際に宛先を変更することができます。

(ホ) 返信用宛先(mfdist1

データ転送規則が“配信&集信”、“集信&配信”および“発信&返信”の場合、このフィールドは必須です。

 このフィールドは返信用PDFファイルに貼り付け、返信時の宛先を指定します。宛先には規定値として、

   “_MANAGER”、“_SETSENDER”、“_ALL”、“_ALLTOHERSIDE”、

   利用者名

の5種が指定できます。以下の説明で使われている用語:“管理者”、“利用者”、“運用者”等については、第2章操作概要の2.1(1)「グループの作成」を選択した場合を参照してください。   

■ “_MANAGER

 宛先は管理者です。

■ “_SETSENDER

 このフィールドははじめて電子フォームを起票したときにFNSシステムが発信者の利用者名を自動的に設定します。従って、宛先は発信者となります。

■ “_ALL

 宛先は返信者以外の全利用者です。

■ “_ALLOTHERSIDE

 返信者が運用者(A端利用者)ならば、宛先は運用者(A端利用者)と対向する全利用者(B端利用者)です。

 返信者が利用者(B端利用者)ならば、宛先は利用者(B端利用者)と対向する運用者(全A端利用者)です。

■ 利用者名

 宛先は指定した利用者です。

 このPDFフォームを表示したとき、宛先フィールドには規定値が表示されますが、データ送信の際に宛先を変更することができます。

(ヘ) タイトル(mftitle) 任意

 転送データに対してタイトルを追加します。受信閲覧や送信履歴閲覧の一覧にこのフィールドで指定したタイトルテキストが表示されます。

(ト) 予約語(mfdistxxxxxx…mfxxx…

 “mfdist”あるいは“mf”で始まるすべての文字列は予約語です。利用者の固有の目的で使用できません。

(チ) クリアボタン

 このフィールドの種類としてはボタンを選択します。ボタン押下時のアクションとして「フォームをリセット」を選択します。

注)JavaScriptを使用してグループ名をセットする場合、リセットで「選択したフィールドのみ」あるいは「選択したフィールド以外」を指定してグループ名フィールド(mfgrpname)はクリアしないようにしてください。

(リ) 印刷ボタン

 このフィールドの種類としてボタンを選択します。ボタン押下時のアクションとして「メニュー項目の実行」→「メニュー項目の編集」→「ファイル」→「印刷」を選択します。

(ヌ) 送信ボタン

 このフィールドの種類としてボタンを選択します。ボタン押下時のアクションとして「フォームを送信」を選択しますが、送信先のURLとしては、

https://www.domain/zone/servlet/MfTransfer#FDF

を指定します。この例では、domain(実際にはitnetinc.co.jpなどのドメイン)内にあるサーバwwwに接続し、ゾーンzoneにあるサーブレットMfTransferを呼び出します。domainやサーバwww、ゾーンzoneの名前はFNSシステムのインストール先のものを使用する必要があります。なお、MfTransferの返却値はFDFで返す必要がありますので、その旨を示すためにMfTransferの後に#FDFを添えます。

 

(c)読出専用(rdonly)、返信用(wtreply)、縮小表示用(pic)ファイルの作成

 前記(a)および(b)では主に書込可(rw)のPDFファイルのデザイン方法について説明しました。ここではその他のファイル:読出専用(rdonly)、返信用(wtreply)、縮小表示用(pic)のデザイン方法について説明します。

 読出専用(rdonly)と返信用(wtreply)は書込可(rw)のPDFファイルをコピーして作成します。読出専用は入力フィールドのプロパティを読出専用に設定します。また、クリアボタンや送信ボタンは必要がありませんので削除します。返信用は返信フィールドを除く入力フィールドのプロパティを読出専用に設定し、宛先mfdistフィールドではなくmfdist1フィールドを使用します。

 mftitleフィールドについては次の点に注意してください。返信用(wtreply)でタイトルを変更したい場合は書込み可のフィールドにします。返信用(wtreply)でタイトルを変更しない場合は読出し専用にします。返信時にタイトルの変更や表示を行わないが、受信閲覧で送信者がつけたタイトルを表示したい場合には返信用(wtreply)では表示無しのフィールドとして定義します。読出専用(rdonly)では読出し専用のフィールドにします。注意すべきことは、送信者の送信履歴閲覧と返信者の送信履歴閲覧は共に読出専用(rdonlyが使用される点です。前記「返信時にタイトルの変更や表示を行わない」ようにした場合、読出専用(rdonlyのフィールドも表示無しとして定義した方が自然になります。

 縮小表示用の画像ファイルはgif形式、jpeg形式などWebブラウザで認識できるイメージデータ形式を選択します。

 これら3個ないし4個のファイルで1つの電子フォームを扱うため、ファイル名はファイルの種類が分かるように付けておくと便利です。例えば仕入れ伝票(ordersm)については、

書込可(rw)のPDFファイル:ordersm(rw)

読出専用(rdonly)のPDFファイル:ordersm(rdonly)

返信用(wtreply)のPDFファイル:ordersm(wtreply)

縮小表示用(pic)ファイル:ordersm(pic)

等のように名前付けすることをお勧めします。

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