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第1章 FNSシステムのコンセプト

  私達は普段、対話、会議、公演、講話、広告、掲示板、新聞、雑誌、書籍など、数え上げればきりがないほど様々なやり方でコミュニケーションを行っていますが、これらの用語はコミュニケーションの“形態”を表しています。つまり対話といえば、二人の人が話し合っている様子が思い浮かびます。会議といえば数人の人達が長いテーブルを囲んで何かを話し合っている光景が浮かびます。また、新聞はもっと複雑で、記者が取材で歩き回っていたり、編集者が紙面をまとめていたり、輪転機の中をロールペーパーが高速で流れていたり、お父さんが新聞を読んでいる光景が思い浮かびます。

 これらから明らかなように、コミュニケーションは二人以上の人々が関係し、ある種の“目的”を伴ったコミュニケーショングループ(以降グループと称す)を形成しています。例えば、ビジネスや教育目的では、

・ 顧客グループ(売り手と顧客)

・ サプライヤーグループ(発注元と供給者)

・ 学校グループ、学習塾グループ(先生と生徒)

・ プロジェクトグループ(リーダーとメンバ)

 などのグループが存在します。このような見方をすると、我々の周りには数え切れないほどのグループが存在し、人々はいろいろな種類のグループに参加、あるいは自ら運営していると捉えることができます。

グループには図1−1に示すように、グループの運営者と利用者という役割をもつメンバ、コミュニケーションの目的となる情報資源、グループ運営上のオペレーション(情報操作)が存在しています。

図1−1 グループの構成

インターネットはこのようなグループをディジタル表現するための格好の手段です。FNSシステムは、このようなインターネットの特徴を捉えて、グループのメンバは場所や組織を越えてインターネット上にグループを生成し、グループの目的に応じた情報資源やオペレーション(情報操作)を割り当てることができるようにしました。また、メンバ間の情報交換ツールとしてWebページや電子フォーム、エージェントプログラムを使用します。

  図1−2はある企業の部門のセールス担当が顧客に対してサービスを提供し、購入担当がサプライヤーとの取引を行い、部門長が各担当を統括するという3つのグループを想定しています。各グループではWeb画面を通してWebページの登録・変更・削除、電子フォームの登録・変更・削除、情報アクセス、電子フォーム集配信などが可能です。セールス担当と顧客間では1対1、1対多、多対多などのメッセージ交換も可能です。購入担当とサプライヤーとの間でも同様です。また、セールス担当はWeb画面を経由して顧客グループの運用を行うと共に、部門グループの参加者として部門長に報告、指示を受けることもできます。購入担当においても同様です。更にこのようなグループは必要に応じて制限なく、目的毎に定義可能です。このようなグループ管理を複合グループ管理方式と呼ぶことにします。

  

図1−2 複合グループ管理の例

 複合グループ管理方式で重要なことは、グループが固有の“目的”をもっていることです。同じメンバ構成であっても“目的”が違えば異なるグループとしてそれぞれ独自の情報資源とオペレーション(情報操作)をもちます。しかし同じメンバは一つのWeb画面を通して所属するすべてのグループにアクセスできます。

※「グループ」という用語は組織の効率化を目的としたグループウェアを連想させるかもしれませんが、グループウェアは「グループ」の1形態と定義できます。従って、複合グループ管理方式を用いることにより受発注業務もグループウェアも同時に実現できます。複合グループ管理方式はグループウェアを包含していると言えます。

 この例から分かるように、グループの情報資源には所属するメンバのみがアクセスでき、他の利用者からはアクセスできません。利用者がシステムにログインするためにグループ名と利用者名、パスワードを用います。あるメンバが複数のグループに所属する場合でもそのグループをログアウトすることなく、そのメンバが所属する他のグループにアクセスできます。

 また、各メンバは(メッセージ)受信キューを保有し、この受信キューを経由してメンバ間のデータ交換(電子フォームの集配信など)を行います。受信キューは、それを保有するメンバだけが参照でき、他の利用者からは参照できません。

 FNSシステムではインターネット上に転送する情報はすべて暗号化します。グループや各利用者の情報は利用者名とパスワード、そして暗号化によって機密が保持されます。また、FNSサーバのなりすましを防止するため、サーバを認証局に登録する必要があります。例えば日本ベリサイン株式会社とサーバID加入契約(Server Certificate Agreement)を結ぶことによりサーバがなりすましサーバでないことを保証してもらいます。

 

 グループのメンバには管理者、運用者などの役割を与えることができますが、これはFNSシステムがメンバ毎に固有のアクセス権や資源をもつことを許しているためにできることです。グループのメンバに多様な役割(権限)を与えることによりグループの働きを豊かにすることができます。

 

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