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日本のソフトウェア産業のゆくえ | ||||||||||||||||||||||||||||
日本のソフトウェア産業はどこへ向かうのだろうか。売り上げ規模が世界一になったことはありませんが、昭和40年代、50年代は米国に次ぐ規模がありました。汎用機の時代はIBMという巨人の背中を見てごまめの歯ぎしりをしながらついて行きました。しかし、平成になると、ネオダマ(ネットワーク、オープン、ダウンサイズ、マルチメディア)が普及し、それまで数億円したシステムが数千万円になり、さらに数百万円になってきました。このようにコンピュータシステムから生み出される価値の価格はものすごい勢いで下落しました。現在はクラウドコンピューティングの普及過程にあり、同じ価値を年間数万円から数十万円以下で利用できるようになると思われます。 このような変化を引き起こした要因として何があるのか、考えられることをいくつか挙げてみましょう。
このような状況から分かるように、日本のソフトウェア産業は既に規模と価格で国際競争力を全く持っていません。日本のITユーザ企業はソフトウェア企業を通して中国やインド企業に業務を委託しています。米国の大手ITベンダーではソフトウェア開発業務の多くをインドのソフトウェア企業に依存しています。この潮流に逆らうことはできません。むしろ、インドや中国ソフトウェア企業を活用することこそ重要になりますが、そうなると日本のソフトウェア企業が持つ付加価値は何なのかという問題が見えてきます。 ソフトウェア開発に必要な開発技術は標準化されて広まって行きます。ソフトウェア開発技術について日本はリーダーシップを取ったことがなく、殆どが米国企業に支配されています。しかし、Ruby言語のように国際的になっているものもあり、日本人に不得意な領域だと決めつけるのは早計でしょうが、日本のソフトウェア企業の多くは事業の根幹がソフトウェア開発技術を使った企業システムなどの開発に偏っていて、パッケージソフトウェアなどの商品としてのソフトウェアの開発に弱い、つまり製品技術に弱いと言えます。また、ソフトウェア開発技術においても、高学歴で低コストで大規模なインドや中国企業に勝つことは困難になっています。ソフトウェア開発技術だけに依存したソフトウェア企業の経営は限界だということです。 日本のソフトウェア企業が今後生き残るためには開発技術+製品技術を持つことが必要です。商品価値がある製品技術をもち、かつその製品を開発するに足る開発技術を持っていることが日本のソフトウェア企業の生き残りの条件です。しっかりした製品技術を持っていれば、開発技術はインドや中国の企業から廉価で調達し、価格競争力のあるソフトウェアを活かした製品を市場に投入することが可能となります。
ソフトウェアの力は主として、 今までにない新しい価値を生み出すことは、前稿:ソフトウェアは知の媒体に述べたように暗黙知をソフトウェアという形式知に表出することや形式知としての情報を分析、組み合わせることによって可能となります。 生産性を向上させることはまだまだ必要です。特に産業の7割以上を占めるサービス業や社会システムにおいて生産性を向上させることにソフトウェアは有効です。労働人口が減少しはじめた日本では1人当たりの生産性を向上させなければ海外との競争に勝てないわけですから、個々の企業の生産性だけでなく、前稿:社会とソフトウェアに述べた都市化による成長戦略も必要となります。 日本のソフトウェア産業はインドや中国と同じ土俵で勝負するのでなく、新しい価値創造のための製品技術の獲得や、サービス業や社会の生産性向上に目標を定めて行くべきではないでしょうか。 |
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