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第4章 FNSシステムの適用

 前章までに述べたことは、FNSシステムのコンセプト、操作概要、アプリケーションの開発方法です。これらはすべて手段の説明であり、実際の業務でどのように適用するかについては若干の解説が必要となります。本章では、大学の運営をモデルとしてFNSシステムの適用方法について解説します。

 大学の情報ネットワークは事務局を中心としたものや研究室を中心としたものなどがあります。事務局には本部と学部の事務局、図書館などがあります。本部事務局、学部事務局、図書館、研究室などがそれぞれ情報ネットワークの中心になります。さらに、組織横断的な研究会、クラブ活動、同好会などの情報ネットワークも存在します。

 各情報ネットワークは関連情報の中心的部門がまとめ役になって、教官、学生、事務員などのメンバから構成されます。例えば、学部の事務局が中心となる情報ネットワークは学生を対象とするものと、教官を対象とするもの、あるいは図書館などに分かれます。

 学部事務局の学生に対する情報ネットワークは次表のような情報を提供します。学生は内容について事務局に問い合わせることもできます。

項 目

概   要

お知らせ 事務局からのお知らせ
休講情報 休講を確認できます
成績確認 成績結果を確認できます
履修確認 単位取得状況を確認できます
受講登録 学科受講の登録ができます
就職情報 募集状況、受け付け

 学部事務局の教官に対する情報ネットワークは次表のような情報を提供します。教官は内容について事務局に問い合わせることもできます。

項 目

概   要

お知らせ 事務局からのお知らせ
施設情報 利用状況の確認と貸出しを受け付けます
休講情報 休講を申請できます
講義要領 講義要領が登録できます

 学部図書館は教官や学生に対して文献情報ネットワークサービスを行います。教官や学生は図書館に対して問い合わせることもできます。

項 目

概   要

お知らせ

図書館からのお知らせ

文献検索

文献検索ができます

購入依頼

新しい文献の購入を依頼できます。

各研究室もまた教官や学生に対して次表のような情報ネットワークサービスを行います。

項 目

概   要

お知らせ 研究室からのお知らせ
スケジュール 講義、イベント
研究資料 海外、国内、学内、研究室内、etc.    
学会 学会案内と参加申し込み
活動状況 状況報告、レポート提出
パーティ パーティ案内と参加申し込み
討議 テーマ毎の掲示板で討議
スタッフ紹介 各スタッフの研究内容を紹介

教授陣は研究活動に必要な研究資料をグループ固有の情報資源として登録しておきます。他の研究スタッフや学生はこれらを研究に役立てることができます。また、研究スタッフや学生はWebページを参照するだけでなく、グループ内の掲示板に意見を書き込み、レポートを提出するためにWebページを利用できます。Webページを経由して学会案内やパーティ案内なども紹介できます。このWebページでは同時に申し込みを受け付けることもできます。

 ある研究者が他の学部など組織横断的研究プロジェクトを運用することもあります。プロジェクトリーダと他の研究者との間では次表のような情報サービスを行います。

項 目

概   要

お知らせ リーダからのお知らせ
研究資料 プロジェクトに必要な研究資料の紹介
研究状況 研究状況を紹介
討議 テーマ毎の掲示板で討議

 プロジェクト運用では掲示板は大変重要な役割を果します。プロジェクトのメンバはWebページに紹介されている研究資料や研究状況を参考に自由な討議を行います。テーマは各メンバが設定し、そのテーマについて他のメンバが参加して意見を述べます。グループのメンバなら誰でも自由に討議テーマを登録し、個別の掲示板を開くことができます。

 学内には以上のように、多様な情報ネットワークが存在します。実際はもっとたくさんの情報ネットワークが存在し、運営されているはずです。これらの情報ネットワークはそれぞれの情報に精通した部門や個人がまとめ役となって運営されています。このような情報ネットワークを1つのモデルとして、FNSシステムの適用方法について解説します。

 大学の情報システムのシステム管理者は大学のサーバマシンにFNSシステムをインストールします。このとき、システム管理者はFNSシステムが予め定めている作成者グループと呼ばれるグループにメンバを登録する必要があります。この利用者は作成者と呼ばれ、作成者はFNSシステム既定の作成者グループの情報資源を参照し、操作することができます。

 さて、作成者には誰がなるのでしょうか。これは一概に言うことはできません。大学の全職員と全学生をすべて一括して事務局で管理したい場合には大学本部の事務局が行うのが良いでしょう。この場合、利用者の総数は数千名に及ぶことがあります。すべての利用者を一括して1つのグループに登録するのは、作業上もFNSシステムの実行上も必ずしも効率的ではありません。複数の小さなグループに分けて1つのグループで束ねるのが効率的です(FNSシステム効率上は、1つのグループ内で定義する実体のある利用者の数は高々3,000以下が望ましい。ただし、これはデータベースエンジンとしてMySQLを使用したFNSシステムの場合であり、HyperSonicSQLを使用したFNSシステムでは全グループの利用者総数は高々500程度が望ましい)。例えば、学部毎、職員毎、あるいは学年毎の小さなグループを作成して大学本部の事務局のグループを作成する場合にはそれら実体のあるすべてのグループの利用者を参照するのが適当でしょう。このようなやり方でグループを作成する場合、同一の作成者ならば自ら作成したグループの利用者を、新しいグループの利用者として一括して参照できますので、この一括参照機能を利用したい場合には作成者は大学本部の事務局が行うのが良いでしょう(図4−1参照)。グループ種別の“通信なし”は利用者管理だけを目的としたグループ定義に適したグループ種別です。

図4−1 既存グループ利用者の一括参照によるグループ作成

もちろん、大学本部の作成者とは別に、学部毎、あるいは研究室毎に作成者を置くことができます。学部や研究室の作成者が大学本部で作成したグループの利用者を一括参照したい場合には、大学本部作成者が学部や研究室の作成者に対して利用者参照許可を与えておく必要があります(2.1(2)「グループ設定の変更等」を選択した場合を参照)。

 ところで、同一のメンバから構成され、目的が異なる複数のグループを作成したいという状況は良く起こることです。例えば、同一研究室の2人の教官がその研究室内のメンバを対象にそれぞれ独自のグループを運営する場合、先ず1つのグループMを作成し、そのグループの利用者を参照してもう1つのグループNを作成します(図4−2参照)。

図4−2 同一メンバからなる異なるグループ

 図4−2では、グループMNのグループ種別は“1対多”とします。作成者は、グループNを作成する際、グループMのメンバを一括参照してグループNへコピーします。こうして簡単にグループMとNとを同じメンバ構成にすることができます。両グループ内には2人の教官ABがいますが、教官AをグループMの管理者兼運用者とし、Mの情報資源を管理・運用します。教官BをグループNの管理者兼運用者とし、Nの情報資源を管理・運用します。グループMNのすべてのメンバは両グループに所属しますから、各メンバはどちらか一方のグループにログインすれば、他方のグループにも移動できます。このようにして、同じメンバから構成される、目的が異なる2つのグループを作成することができます。両グループは独自のWebページを保有し、通信を行うことができます。また、グループ固有のデータベースにアクセスすることもできます。

 図4−2の例では、グループMNのグループ種別は“1対多”でした。運用者が1人の場合にはこの種別が最適なのですが、1つのグループに運用者が複数存在する場合もあります。例えば、学生を対象とした学部事務局が運営するグループはどうでしょうか。学部事務局のWebページは1つにまとめるのが適当でしょう。しかし、成績や履修を扱う事務官と就職を扱う事務官は異なりますので、少なくとも2人の事務官が学生を対象に独立に対応することになります。従って、このグループの種別は“多対多”が適しています。学生からの成績・履修関係の問い合わせは教務関係の事務官に伝えられ、学生に返事が返されます。同様にして、学生からの就職関係の問い合わせは就職関係の事務官に伝えられ、学生に返事が返されます(図4−3参照)。

図4−3 “多対多”グループの例

 学生からの問い合わせにはWebページ上にHTMLフォームを貼りつけておき、問い合わせの送り先を教務担当あるいは就職担当にしておけば良いわけですが、電子フォームを使用することもできます。教務担当や就職担当は予め所定の電子フォームを学部事務局グループの情報資源として登録しておきます。学生は学部事務局グループの電子フォーム一覧から所定の電子フォームを取り出して各事務担当と通信を行います。送り先として教務担当あるいは就職担当を電子フォーム内に指定しておくことができます。

 教務や就職関係のデータがデータベースで管理されていて、学生が教務担当や就職担当に問い合わせるのではなく各データベースへ直接問い合わせる方が合理的な場合があります。FNSシステムでは、各データベースへのアクセスを仲介するJavaサーブレットを学部事務局グループに登録しWebページ経由でデータベースにアクセスできるようにしています(図4−4参照)。

図4−4 データベース連携

 学部事務局グループと連携するデータベース(教務DBあるいは就職DB)はFNSシステムと同じマシン上に置いても、全く別のマシンに置いてもかまいません。しかし、両システムが動作するマシンはインターネット上の認証局に登録しておく必要があります。また、両システム間の通信は暗号化します。このようにして、教務DBや就職DBは学部事務局グループの学生に開放することができます。

 図4−4の例では学部事務局グループに教務DBあるいは就職DBアクセス用のJavaサーブレットを登録することにより、データベースのアクセスを制御しています。これは大変重要な機能です。教務担当あるいは就職担当をメンバとするグループを作成し、そのグループに教務DBあるいは就職DBを運用するJavaサーブレットを登録してデータベースの運用を行うこともできます。学部事務局グループと、教務担当グループあるいは就職担当グループは教務DBあるいは就職DBを介して連携作業を行います(図4−5参照)。

図4−5 アプリケーション経由のグループ間連携

 学部事務局は学生に対して教務DBを介して、休講情報、成績確認、履修確認、受講登録等のサービスを提供します。学部事務局の教官を対象としたグループでは休講の申請や講義要領の登録が行われますが、これも教務DBへの連携で遂行されます。就職情報についても同様のやり方でグループ間連携が行われます。

 学部図書館が提供する文献検索についても、図書館DBと学部図書館グループとを上記と同様の方法で連携させてサービスを提供します。

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