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がらりと変化した情報システム

 インターネットは1990年代前半から普及してきましたが、当初メールやWWWが主流だったサービスが進化し、2010年頃にはインターネットを利用した技術としてSNS、スマートフォン/タブレット、ビッグデータ、クラウドが普及してきました。これらは相互に関連しており、全体をSMAC(Social, Mobile, Analytics, and Cloud)と呼ぶこともあります。SMACは現在進行形で進化しています。SMACの内、今後社会的に大きな影響を与えるのはAnalytics即ちビッグデータです。従来捉えるのが難しかった社会活動/現象や自然活動/現象をデータとして把握し、判断やアクションにつなげることが期待できるからです。社会や自然界のどこで何が起きているのかを把握して、前稿:ソフトウェアは知の媒体に示した「図1 社会・自然と知の関係サイクル」が具体化できるようになりました。

 
図1 社会・自然と知の関係サイクル

 SMACが今後どのような方向に進化していくのかを見通すには背後にある技術を見ておく必要があります。SMACを支えている技術はWeb技術です。世界中のすべての情報資源はWeb技術で繋がり、目的が異なる複数の情報システムが場合によっては重なり合うように動作します。ある時は連携し、ある時は独立に、情報システムはインターネット上の情報資源を繋ぎ合わせながら動作します。Web技術により、情報システムとコンピュータとを固定的に関係づけておく縛りがなくなりました。インターネットというキャンバス上に情報システムという「絵画」を自由に何枚でも描くことが可能になったのです。Web技術は1つの技術を指しているのではなく、HTML、CSS、JavaScript、ハイパーリンク、XML、JSON、API群、データベースなどの標準技術の集まりを指しています。Web技術は従来からある三層アーキテクチャ(プレゼンテーション層、アプリケーション層、データ層)のプレゼンテーション層の構築技術となっています。Web技術で裏打ちされたプレゼンテーション層を持つ情報システムは自らのアプリケーションやデータベースだけでなく、他者の情報資源もシステムの一部に組み入れることができます。
 このような情報システムの開発に対して、従来の開発方法論やプロジェクト管理手法は通用しなくなりました(勿論ローカルな情報システム開発には必要)。それは次の理由に依ります。

  1. 情報システムの開発に関わる組織や人は世界に分散しており、自らの意思で管理できない。
     
  2. 情報システムの構成要素の管理が複雑になった。他者が提供するAPIのフォローなど、不確定要素が増えた。
     
  3. 国や企業、人の信頼性が情報システムの信頼性と関連するようになった。
     
  4. セキュリティ保全が最重要の検討課題になった。
 
 上記のように最近の情報システムは大きく様変わりしています。従って、ITプロジェクト管理についても考え方を変えていかなくてはなりません。